みなさんが使っている医薬品や化粧品は、安全に使用するために実験が行われていることをご存知でしょうか?
実験では、それらを実際に使用するとどのような反応があるのか、動物を用いて確かめています。
つまり、私たちが安全に製品を利用するために、動物が実験の犠牲になっているのです。
今回は、動物実験の概要や、実験に対する意見について紹介させていただきます。
動物実験について一緒に学んでみよう
Contents
動物実験とは
動物実験とは、医薬品や化粧品などを人に適用する前に、動物で試すことにより反応を見る実験のことです。
医薬品や化粧品などは、どのように人体に作用するか、副作用はないかなどを調べる必要があります。
研究の多くは、反応を見るために生体を用いた実験が不可欠です。なかには人間を被験者とした実験もありますが、限界があります。そのため、人間と同じ生命原理が働いている動物を実験に用いるのです。
実験が必要なのは分かるけど…
当然研究者は、動物の生命を可能な限り人道的に取り扱っています。
そうしたなか、世界では動物実験を廃止する動きが活発になっています。
EUでは2013年に化粧品に関わる動物実験が禁止されました。また、2023年に動物実験を全面禁止とする規制を目指しています。
このように、動物実験は私たちが安全に医薬品や化粧品を使うために行われていますが、反対の声もあがっています。
反対と賛成の理由を比較して、本当に動物実験が必要か、みなさんも考えてみましょう。
どんな意見があるんだろう?
動物実験への反対理由
動物福祉の考え方から
動物福祉とは、動物が精神的・肉体的に充分健康であり、幸福であり、適切な環境で育てられていることです。
動物も人間と同じように命があり、そして感覚が備わってます。
そのため、人間には動物ができる限り快適に、苦痛なく生活できるようにする義務と責任があります。
しかし動物実験の際、動物たちは大きな苦痛を受けています。
例えば、刺激性のある薬物を投与されたり、体を拘束されたりしています。実験によっては後遺症が残り、最悪の場合、安楽死をさせられる場合もあるのです。
このような事実から、 動物福祉を著しく阻害するとして動物実験に反対の声が多いのです。
また、動物には、動物倫理(人間からの虐待や残虐な扱いを受けることなく生きる権利)があり、この観点からも反対する意見が出ています。
多くの動物たちが苦痛から解放されるといいな
ちなみに、日本の動物福祉のレベルは世界と比べてかなり低い水準となっています。
世界動物保護協会(WAP)が発表している、その国の動物福祉に関する法律や態度を総合して産出する動物保護指数(API)において、日本はA~G評価の内、E評価となっているのです。
日本は対応を改める必要がありそうだね
動物実験を行っても事故が起こる可能性があるから
人間と動物は同じく生物ですが、種族がまったく違います。
実験動物としてよく使用されるウサギは人と大きな違いがあることが明らかになっています。
14の家庭用品について目の炎症の持続時間に関するウサギのデータをヒトのデータと比較したところ、18倍から250倍もの違いがあった。
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また、動物実験を行い有用性が確認された薬なのにも関わらず、その薬を用いて多くの人が亡くなった死亡事故もあります。
このことから、「動物実験によって安全性が確かめられないのであれば動物実験を廃止するべき」という声があがっています。
動物実験は万能じゃないんだね…
動物実験への賛成理由
研究費が安価であるから
大学の研究費や製薬企業の開発費は無限にあるわけではありません。
研究費や開発費が高騰すると、新薬の開発が遅れや、税金の値上がりに繋がるなど、私たちの負担も増えます。
スーパーコンピュータ並みの機器がどの研究でも使えるくらい安価であれば、どんな研究もうまく進みそうですが、現在の技術では不可能です。
それに対し、実験用のマウスやラットは1匹数千円で手に入ることから、動物実験はまだまだ行われているのです。
限られたお金の中で研究者たちも苦労しているんだね
動物実験に頼らなくてはならない部分があるから
近年では技術の発展により、コンピュータ・シミュレーションなどが研究に取り入れられ、動物実験の一部を代替できるようになってきました。
しかし、コンピュー タ・シミュレーションであったとしても動物から得たデータを入力する必要があり、技術が発展した現在でも、研究は動物を用いざるを得ないのです。
専門家も、動物実験の必要性が全面的になくなる未来は、まだまだ先だとしています。
研究がどんどん進歩して少しでも動物実験が減るといいな
動物実験の3R原則とは
今日まで賛否の論争が止まない動物実験ですが、1959年にイギリスの研究者であるRussell氏とBurch氏によって、世界的な動物実験の基準理念である「3Rの原則」が提唱されています。
Replacement(代替):できる限り動物の代替法を利用すること
…意識・感覚のない低位の動物種の利用、コンピューターを用いた実験方法、重複実験の排除
Reduction(削減):利用される動物の数を少なくすること
…使用動物数の削減、動物は科学的に必要な最少の数のみ使用
Refinement(改善):できる限り動物に苦痛を与えないこと
…苦痛軽減、安楽死措置、飼育環境改善など
日本では動物保護等に関する法律として「動物の愛護及び管理に関する法律」がありますが、2006年の法改正により、3Rの原則の内容が盛り込まれました。
動物実験も少しずつ改善されているんだね
動物実験の是非を考え、動物の福祉を守ろう!
今回は、動物実験の概要や賛否の理由について紹介させていただきました。
私たちが安心して医薬品や化粧品を使用できている背景には、動物実験によって犠牲になっている動物がいることを忘れてはいけません。
このコラムを通して、みなさんが動物を大切しようという意識や動物実験に対する自分の意見を持つことができれば幸いです。
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