2021年6月14日、最新のSDGsの達成・進捗状況を報告した『Sustainable Development Report 2021』が公開されました。
SDGsが採択されてから6年。現在、SDGsはどのくらい達成されているのでしょうか。
今回は、報告書に基づいた各国のSDGs達成度や日本の達成進捗状況を、昨年(2020年)の結果と比較しながら紹介します。
2030年を目標に、達成に向かえているのかな?
Contents
SDGs国別ランキング2021
まず、各国の順位とスコアについて、
- 上位20カ国
- 国連常任理事国
- 下位5カ国
を紹介します。
SDGsランキング:1位〜10位
※表記の見方
順位:国名(2021年のスコア)(2020年の順位 / 2020年のスコア)
- 1位:フィンランド(85.90)(2020年:3位 / 83.77)
- 2位:スウェーデン(85.61)(2020年:1位 / 84.72)
- 3位:デンマーク(84.86)(2020年:2位 / 84.56)
- 4位:ドイツ(82.48)(2020年:5位 / 80.77)
- 5位:ベルギー(82.19)(2020年:11位 / 79.96)
- 6位:オーストリア(82.08)(2020年:7位 / 80.70)
- 7位:ノルウェー(81.98)(2020年:6位 / 80.76)
- 8位:フランス(81.67)(2020年:4位 / 81.13)
- 9位:スロベニア(81.60)(2020年:12位 / 79.80)
- 10位:エストニア(81.58)(2020年:10位 / 80.06)
フィンランド・スウェーデン・デンマークの北欧3ヵ国は、ランキングが報告されている2016年から今日まで上位3位を記録し続けています。
また2020年との比較においては、ベルギーとスロベニアがスコアを大きく伸ばしています。
ヨーロッパの国ばかりが並んでいるね
SDGsランキング:11位〜20位
- 11位:オランダ(81.56)(2020年:9位 / 80.37)
- 12位:チェコ共和国(81.39)(2020年:8位 / 80.58)
- 13位:アイルランド(80.96)(2020年:14位 / 79.38)
- 14位:クロアチア(80.38)(2020年:19位 / 78.40)
- 15位:ポーランド(80.22)(2020年:23位 / 78.10)
- 16位:スイス(80.10)(2020年:15位 / 79.35)
- 17位:イギリス(79.97)(2020年:13位 / 79.79)
- 18位:日本(79.85)(2020年:17位 / 79.17)
- 19位:スロバキア共和国(79.57)(2020年:27位 / 77.51)
- 20位:スペイン(79.46)(2020年:22位 / 78.11)
日本は18位!順位は2020年より下がってしまっているね
新たに上位20カ国にランクインした国は、ポーランド(前年23位)、スロバキア(前年27位)、スペイン(前年22位)です。
その一方、昨年は上位20カ国にランクインしていたものの、順位を落としてしまった国は、
- 23位:ニュージーランド(79.13)(2020年:16位 / 79.20)
- 24位:ベラルーシ(78.82)(2020年:18位 / 78.76)
- 28位:韓国(78.59)(2020年:20位 / 78.34)
でした。
順位だけでなく、スコアが下がってしまった国もあるんだね
国連常任理事国のSDGsランキング
国際連合の常任理事国5カ国は、以下のような結果となりました。
- 8位:フランス(81.67)(2020年:4位 / 81.13)
- 17位:イギリス(79.97)(2020年:13位 / 79.79)
- 32位:アメリカ(76.01)(2020年:31位 / 76.43)
- 46位:ロシア連邦(73.75)(2020年:57位 / 71.92)
- 57位:中国(72.06)(2020年:48位 / 73.89)
ロシアをのぞき、フランスとイギリスは順位を下げ、アメリカと中国は前年よりもスコアが下がっていることが分かります。
常任理事国は「拒否権」を持っています。つまりこの5カ国は、国連安全保障理事会(安保理)の審議において1カ国でも反対があった場合は決定が成立しないという重要な意思決定権を持っている国です。
そのことを踏まえると、国際的にリードするべき国々がSDGs達成に貢献できていないことは、残念な結果であると言えます。
現状にしっかりとみんなで向き合っていきたいね
SDGs下位ランキング:161位〜165位
ランキング付けされた165カ国のうち、下位5カ国であったのは以下の国々でした。
- 161位:リベリア(48.65)(2020年:162位 / 47.12)
- 162位:ソマリア(45.61)(2020年:163位 / 46.21)
- 163位:チャド(40.90)(2020年:164位 / 43.75)
- 164位:南スーダン(38.90)(2020年:165位 / 43.66)
- 165位:中央アフリカ共和国(38.27)(2020年:166位 / 38.54)
2020年は166位までランキング付けされていたため、下位5カ国は変化していないことになります。
そしてリベリアをのぞいた4カ国は、前年よりスコアが下がっていることが分かります。
上位の国も下位の国も、協力して達成に向かう必要がありそうだね
SDGsの達成進捗状況は?
上の図は、2015年と比較して、SDGsの各ゴールが世界全体でどのくらい進捗したかを示したグラフです。
このグラフから、最も進捗が見られるゴールは、SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」であることが分かります。そして次に、SDGs1「貧困をなくそう」、SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」が続きます。
少しずつ変化しているんだね
その一方で、SDGs12「つくる責任つかう責任」とSDGs15「陸の豊かさも守ろう」は2015年よりも悪化していると報告されています。
また、環境にまつわる目標(SDGs6・13・14・15)は、全体的に変化の割合が小さい(もしくは悪化している)ことが分かります。この4つの目標は、SDGsウェディングケーキモデルにおいて「生物圏」に位置し、SDGsを達成していくうえでとても重要な目標です。
もっと危機感をもって取り組む必要がありそうだね
日本のSDGs達成状況は?
日本の順位とスコアの推移
2016年から2021年まで、日本の順位とスコアは以下のように推移してきました。
- 2016年:18位(75.0)
- 2017年:11位(80.2)
- 2018年:15位(78.5)
- 2019年:15位(78.9)
- 2020年:18位(79.1)
- 2021年:18位(79.8)
日本は2017年をピークに、近年順位が下がっており、スコアも過去最高値を更新できていないことが分かります。
そんな…
ゴールごとの達成状況と取り組みの傾向
上の図は、日本における各ゴールの達成状況と、取り組みの傾向がまとめられたものです。
各ゴールの達成状況を示したアイコンの色はそれぞれ、
緑:達成できている 黄:課題が残っている
オレンジ:重要課題 赤:最重要課題
を意味しており、取り組みの傾向を示した矢印の色はそれぞれ、
緑:順調・達成を維持 黄:適度に向上している
オレンジ:停滞している 赤:悪化している グレー:不明
を意味しています。
日本は最重要課題がまだ5つも残っているんだね
日本で取り組みが遅れている指標
Sustainable Development Reportでは、目標の達成度を計るための指標(Performance by Indicator)が各目標ごとに設けられてます。
全部で119項目あり、なかでも日本の取り組みが遅れていると報告されたのは以下の20項目でした。
- 【ゴール1】相対的貧困率
- 【ゴール5】女性国会議員の人数
- 【ゴール5】男女の賃金格差
- 【ゴール5】無賃労働時間(家事など)の男女差
- 【ゴール7】一次エネルギー供給量に占める再生可能エネルギーの割合
- 【ゴール10】パルマ比率(=最富裕層10%と最下位層40%の所得比)
- 【ゴール12】1人あたりの電子廃棄物量
- 【ゴール13】化石燃料の燃焼とセメント生産によるCO2排出量
- 【ゴール13】輸入に伴うCO2排出量
- 【ゴール13】EUR60 / t-CO2における炭素の価格付けスコア
- 【ゴール14】生物多様性にとって重要な海洋地区の保護された平均面積
- 【ゴール14】海洋健全度
- 【ゴール14】過剰な漁獲・崩壊した魚種資源から獲られた魚の割合
- 【ゴール14】輸入に伴う海洋生物多様性への脅威
- 【ゴール15】生物多様性に重要な地上地区の保護された平均占有面積
- 【ゴール15】生物多様性に重要な淡水地区の保護された平均占有面積
- 【ゴール15】レッドリスト
- 【ゴール15】輸入に伴う地上・淡水の生物多様性への脅威
- 【ゴール17】国民総所得(GNI)に含まれる政府開発援助(ODA)の割合
- 【ゴール17】金融秘密度
ゴールごとの達成状況において「最重要課題」と報告されているゴール5・13・14・15・17に関する指標が特に多く、加えてゴール1・10・12における一部の指標も取り組みが遅れていると報告されています。
この一覧から、日本の抱えている問題が具体的に分かるね
2020年との比較
上の図は、『Sustainable Development Report2020』で報告された、2020年の日本における各ゴールの達成状況と、取り組みの傾向がまとめられたものです。
2021年の結果を2020年と比較すると、ゴールごとの達成状況は昨年の結果と変わっていません。
しかし、取り組みの傾向はゴールごとによって少しずつ変化しています。
特に気になるのは、SDGs15「陸の豊かさを守ろう」への取り組みに対する評価です。2020年は「適度に向上している」と評価されていたのに対し、2021年の報告では「悪化している」と評価されています。
日本の現状は思ったより深刻なんだね
SDGsを達成して持続可能な社会をつくろう!
2021年のSDGs達成・進捗状況をみると、順調に達成へと向かえている国やゴールは、あまり多いとは言えないことが分かります。
SDGsは2030年までの目標です。残された9年で、少しでも達成に向かっていけるよう1人1人が意識できることを考えてみましょう。
なるほどSDGsでは、SDGsにまつわるコラムやインタビュー記事などを掲載しています。ぜひ気になるものから読んでみてください。
▼ 2020年のSDGs達成・進捗状況は?
【出典】