みなさんは病気になった時、どうしているでしょうか?
多くの人は、病院に行き医師に病状を診ていただきますよね。
しかし、世界には病院に行くことができない人や、医療費の負担で生活に苦しんでいる人が多くいます。
今回は、医療に関わるユニバーサルヘルスカバレッジについて学んでみましょう。
ユニバーサルヘルスカバレッジってなんだろう?
Contents
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)とは?
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)とは、「すべての人々が適切な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で受けられる状態」のことです。
すべての人が適切な保健医療サービスを適切な費用で受けられることで、感染症で亡くなる人や貧困に苦しむ人を減らすことができます。
日本では、1961年の国民健康保険法の改正により、すべての国民が加入する公的医療保険が確立しました。また、各県に医科大学が設置されており保健医療へのアクセスがしやすくなっており、日本はユニバーサルヘルスカバレッジを早期に達成している国と言われています。
しかし、世界に目を向けてみると、感染症で多くの人が亡くなっていたり、貧困のために保険医療サービスを受けられていなかったりなどといった現状が多く見られます。
そのため、ユニバーサルヘルスカバレッジが重要視されているのです。
みんなが医療を受けられる世の中になるといいね
ユニバーサルヘルスカバレッジとSDGs
ユニバーサルヘルスカバレッジは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットの1つとなっています。
2030年までに、誰もが適切な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられる状態が求められています。
【3.8】
全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全 で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カ バ レッジ(UHC)を達成する。
▼SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」について詳しく学んでみよう
ユニバーサルヘルスカバレッジを達成することは重要な目標なんだね
ユニバーサルヘルスカバレッジにおける課題
ユニバーサルヘルスカバレッジを実現するためには、
- 物理的アクセス
- 経済的アクセス
- 社会習慣的アクセス
の3つのアクセスを改善する必要があります。
それぞれどんな課題があるんだろう?
物理的アクセス
物理的アクセスの課題例としては、下記の3点があげられます。
近所に医療施設がない
保健医療サービスを受けるには、近くに病院などの医療施設がなくてはなりません。特に、農村部には病院が少ないため、病気になっても医師にみてもらうことが難しいのです。
医薬品や医療器材がない
適切な医療品や医療器材がなければ、保健医療サービスを提供することはできません。
医師や看護師がいない
世界の40%以上の国では、1,000人に対して医師が 1 人以下だと言われています。特に、サハラ以南アフリカ地域で人材不足が顕著になっています。
すべての人に保健医療サービスを提供するためには、2030年までに1800 万人の医療従事者が必要だと言われています。
身近に病院があったり医師がいなかったりすると保険医療サービスを受けられないよね
経済的アクセス
経済的アクセスの課題例としては、下記の3点があげられます。
医療費の自己負担が高い
日本では保険によって私たちが負担する費用が少なく、病気になってもすぐに保健医療サービスを受けることができます。
しかし、多くの発展途上国では医療費のほとんどを自己負担で支払わなければいけません。
そのため医療費が高額になり、保健医療サービスを簡単に受けることが難しくなっています。
受診のための交通費が高い
前述の「近所に医療施設がない」ことによって、都市部の医療施設に行かなければならない場合、保健医療サービスを受ける費用だけではなく、高い交通費も負担しなければならない人が多くいます。
病気に伴い収入が減る(看病する家族も)
仕事に行けないことで収入が少なくなり、適切な保健医療サービスを受けることできなくなってしまいます。
経済的負担を解決しないとすべての人が保険医療サービスを受けられないね
社会習慣的アクセス
社会習慣的アクセスの課題例としては、下記の3点があげられます。
サービスの重要性、必要性を知らない
教育が行き届いていないことを背景に、保健医療サービス受ける重要性や必要性を感じない国もあります。こうした場合、命に関わる疾患でないとなかなか病院に行かないことが多いのです。
家族の許可が得られない
前述の「経済的アクセス」の理由などで、家族から保健医療サービスを受ける許可を得ることができない人もいます。
言葉が通じない
医師に言語が通じないために、保険医療サービスを受けることを諦める人がいます。
いろいろな課題が絡み合っているんだね
ユニバーサルカバレッジに向けた世界の現状と取り組み
世界では人口の約半分の人が保険医療サービスにアクセスできていません。
また、WHOの調査によると
・約1億人の人々は医療費を支払うために、「極度の貧困」(1日当たり1.9ドルでの生活)に苦しんでいる
・約10億人の人々が、医療費のために家計の10%以上を支払っている
などの結果が出ており、医療によって多くの人が貧困に陥っていることが現状です。
このような現状を改善するために、日本をはじめとして世界では取り組みが行われています。
G7伊勢志摩サミットでの日本の表明
2016年のG7伊勢志摩サミットにおいて、日本はG7として初めて首脳会談でユニバーサルヘルスカバレッジの推進を主要テーマに設定しました。
ここでは、国際社会と連携して、発展途上国のユニバーサルヘルスカバレッジの確立を支援すること、そして主導的な役割を果たしていくことを表明しました。
また、2019年のG20大阪サミットでは、各国のユニバーサルヘルスカバレッジへの共通理解を取りまとめ、2030年の達成に向けての方向性が決まりました。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デー
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デーは毎年12月12日に設定されており、すべての人の健康を求める運動を行っています。
ユニバーサルヘルスカバレッジの発信を行うと共に、毎年、12月12日周辺ではキャンペーンが行われています。
2020年は新型コロナウイルスの影響により、イベントだけではなく、保険医療サービスへの障壁を感じたことのあるアーティストによるアートギャラリーがオンライン上で開かれました。
ユニバーサルヘルスカバレッジの取り組みは広がっているんだね
ユニバーサルヘルスカバレッジを理解してSDGsを達成しよう!
今回は、ユニバーサルヘルスカバレッジについて紹介しました。
誰もが安心して保険医療サービスを受けられるような世界になるといいですね。
今日では、新型コロナウイルス感染症が蔓延していますが、医療崩壊が問題になっています。
適切な人に治療が行き届くように、私たちは感染症対策に努めていきましょう。
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▼感染症についても学んでみよう
【出典】
国際連合広報センター , 公益財団法人日本WHO協会 , 国際開発センター , JICA , ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デー