SDGsでは、17のゴールに加えて、それぞれのゴールが全169のターゲットで構成されています。
ターゲットの中には普段耳にしない言葉も含まれており、難しく感じた人も多いのではないでしょうか。
この記事では、SDGsのターゲットに登場する15個の難解用語を解説しています。
ターゲットの内容には注目したことがない人も、ぜひ一緒にSDGsで掲げられている内容を理解していきましょう。
ターゲットの内容は難しくて諦めてた…
この機会に勉強してみたい!
Contents
SDGsとは?
SDGsとは、とは、「持続可能な開発目標」を意味するSustainable Development Goalsの略です。
2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に、2030年までに達成すべき国際目標として記載されました。
「誰一人取り残さない – leave no one behind -」をスローガンに、持続可能な世界を目指した17つの目標が掲げられています。
そして17つの目標を達成するために、具体的な達成基準を示した169のターゲットが存在しています。
さっそくターゲットについても見ていこう!
強靭性(レジリエンス)
「強靭性(レジリエンス)」とは、変化に適応し、困難から回復する力を意味します。
実はSDGsにおいて、この言葉は全169のターゲットのうち8回も登場しています。
1.5
2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
2.4
2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
9.1
全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.a
アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
11.b
2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c
財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。
13.1
全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
14.2
2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
こんなにたくさん!大切なキーワードなんだね
ジーンバンク
「ジーンバンク」とは、ヒトや動植物、微生物の遺伝資源を管理する仕組みのことです。直訳のまま「遺伝子銀行」と言われることもあります。
この仕組みによって、生物多様性を守るだけでなく、医薬品や農産物の開発に活用することができます。
SDGsでは、ゴール2「飢餓をなくそう」のターゲットに登場する言葉です。
2.a
開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
ジーンバンクが、世界中の食糧供給につながっているんだね
ドーハ・ラウンド
「ドーハ・ラウンド」とは、貿易における障壁をなくすことを目的として世界貿易機関(WTO)が主催する多角的貿易交渉のことです。
「ラウンド」とは、すべての加盟国が参加して行われる貿易自由化交渉を意味しており、2001年にカタールの首都・ドーハで開催されたWTO第4回閣僚会議で交渉が決定したことから、「ドーハ・ラウンド」と呼ばれています。
SDGsでは、ゴール2「飢餓をなくそう」、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」において登場しています。
2.b
ドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
17.10
ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の受諾を含むWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
まさにパートナーシップに関係する言葉!
ちなみに、ターゲット2.bにおける「マンデート」とは、委任状・命令を意味します。
デリバティブ市場
「デリバティブ市場」とは、デリバティブ取引が行われる市場のことです。
そしてデリバティブ取引とは、株式や外国為替などの金融商品におけるリスクを低下させるために考えらえた取引で、そうした金融商品から派生した商品をデリバティブと呼びます。
SDGsでは、ゴール2「飢餓をなくそう」のターゲットに登場する言葉です。
2.c
食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする
商品の適切な価格設定に大きく関係しているんだね
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」とは、すべての人々が適切な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で受けられる状態のことです。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現することで、感染症によって多くの人が亡くなったり、貧困のために健康状態を優先できなかったりする事態を防ぐことができます。
SDGsでは、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットで言及されています。
3.8
全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するためにはどんな取り組みが必要なんだろう?
▼「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」実現のために改善すべき3つのアクセスって?
知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)
貿易における知的所有権(…アイデアや創作物などを保護する権利。知的財産権。)について1995年に定められた国際協定のことです。
英語では、Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rightsと表記され、頭文字から「TRIPS協定」とも言われます。
SDGsでは、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットで登場し、医薬品の開発やそれらへのアクセスに関して言及されています。
3.b
主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
SDGsのターゲットは、いろんな国際協定をもとに定められているんだね
グローバル・シチズンシップ
「グローバル・シチズンシップ」とは、誰もが世界の一員であり、世界に対して責任を持っているという考え方です。
SDGsでは、ゴール4「質の高い教育をみんなに」のターゲットで登場します。
4.7
2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方にも似ているね!
オーナーシップ
「オーナーシップ」とは、個人が主体性・当事者意識を持って物事の取り組む姿勢を指します。
SDGsでは、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」のターゲットで登場し、女性が男性と平等にオーナーシップをもつことが目指されています。
5.a
女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
女性の社会進出に関係するターゲットだね
エネルギーミックス
「エネルギーミックス」とは、社会全体に供給する電気を、特定の発電源に偏らず、様々な発電方法をバランスよく組み合わせて作ることを意味します。
SDGsでは、ゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」のターゲットで登場する言葉です。
7.2
2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
エネルギーミックスはどうして重要なんだろう?
▼「エネルギーミックス」の重要性や日本の現状、エネルギー計画は?
ディーセント・ワーク
「ディーセント・ワーク」とは、「働きがいのある、人間らしい仕事」を意味します。
ディーセント(decent)が「まともな、きちんとした」という意味をもつことから、仕事が単なる労働ではなく、「人間としての生活や権利を守る」といった意味が込められています。
SDGsでは、ゴール8「働きがいも、経済成長も」を説明した文章の中で登場します。
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
ゴールにおける「働きがい」は、この言葉につながっているんだね!
▼「ディーセントワーク」の条件や実現のための取り組みは?
高付加価値セクター・労働集約型セクター
「高付加価値セクター」とは、生産過程を通して原材料よりも高い価格で商品を販売する産業のことです。
そして「労働集約型セクター」とは、人件費の割合が高い産業を意味し、人手が多く必要な医療産業やサービス業、建設業など当てはまります。
そのほかには「資本集約型セクター」が存在し、重化学工業や鉄道事業など、設備投資額の割合が高い産業を意味します。
SDGsでは、ゴール8「働きがいも、経済成長も」のターゲットで登場し、この高付加価値セクターと労働集約型セクターに力を入れることが目標として掲げられています。
8.2
高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
労働の生産性を向上させることが目指されているんだね
拡大統合フレームワーク(EIF)
「拡大統合フレームワーク(Enhanced Integrated Framework)」とは、特に後発開発途上国(…開発途上国の中でも特に開発が遅れている国)に対して貿易に関する支援を行う国際的な枠組みのことです。
SDGsでは、ゴール8「働きがいも、経済成長も」のターゲットで登場します。
8.a
後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
パートナーシップを促進する枠組みにはいろんなものがあるんだね
バリューチェーン
「バリューチェーン」とは、製品の製造から販売まで、価値を生み出すまでの開発や労務管理など、すべての活動の繋がりを意味します。
混同しやすい言葉に「サプライチェーン」というものがありますが、これは製品の製造から販売までの一連の流れを示す言葉です。
SDGsでは、ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」のターゲットで登場します。
9.3
特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
ビジネスでよく使われる考え方だね!
持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み
2012年のリオ+20において採択された枠組みのことで、「低炭素型ライフスタイル」と「社会システム」の確率が目指されています。
1992年の国連環境会議(地球サミット)において「持続可能な消費と生産」が課題として認識され、その20年後にようやく行動指針として形となりました。
SDGsでは、ゴール12「つくる責任つかう責任」のターゲットで登場します。
12.1
開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
SDGs12において、1番目のターゲットで言及されているんだね
違法・無報告・無規制(IUU)漁業
「違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported, Unregulated)漁業」とは、
- 無許可操業
- 無報告または虚偽報告された操業
- 無国籍の漁船
- 地域漁業管理機関非加盟国の漁船による違反操業
など、各国の国内法や国際的 な操業ルールに従わない無秩序な漁業活動のことです。
SDGsでは、ゴール14「海の豊かさを守ろう」のターゲットで登場し、これらの漁業活動をなくすことが目指されています。
14.4
水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.6
開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
適切な漁業活動で海の豊かさを守っていきたいね
SDGsのターゲットを正しく理解して目標を達成しよう!
今回は、SDGsのターゲット中に登場する15の用語を紹介しました。
SDGsのターゲットは169と非常に多く、難しく感じる方も多いと思います。
今回の記事が、少しでもSDGsを正しく理解することに繋がっていれば嬉しいです。
なるほどSDGsでは、ほかにもSDGsに関するコラムやインタビュー記事などを掲載しています。ぜひ気になるものから読んでみてくださいね。
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