「ディーセントワーク」という言葉を聞いたことがありますか?
私たちの生活は誰かの「仕事」で成り立ち、そしてまた誰もが「仕事」を通して社会とつながっています。そんな「仕事」に関係した言葉に「ディーセントワーク」というものがあります。
そしてこの言葉は、SDGs8番目のゴール「働きがいも、経済成長も」の中でも取り上げられているのです。
この記事では、「ディーセントワーク」について、言葉の意味から関連する日本の取り組みまでを解説しています。すべての人に関係する「仕事」について、ディーセントワークの観点から一緒に考えてみましょう。
Contents
ディーセントワークとは?

ディーセントワークとは、「働きがいのある、人間らしい仕事」のことを指します。
ディーセント(decent)が「まともな、きちんとした」という意味をもつことから、仕事が単なる労働ではなく、人間としての生活や権利を守るものとなるような意味が込められています。
ディーセントワーク(Decent work)という言葉が初めて使われたのは、1999年に開かれた国際労働機関(ILO)の総会でした。それ以来、現在はヨーロッパを中心にこの考え方が浸透しています。

仕事が「持続可能」であるためには、人間が人間らしく働ける必要があるよね。
ディーセントワークの条件とは?

では、「働きがいのある、人間らしい仕事」とは具体的にどのような仕事を指すのでしょうか?
日本では、厚生労働省が「ディーセントワークと企業経営に関する調査研究事業報告書」にて4つ定めており、簡単にまとめると以下のようになります。
- 働く機会と収入が安定していること
- 権利(労働三権など)が確保されていること
- 家庭と職場の両立が社会保障によって守られること
- 公正で平等な扱いを受けること

どれも働くうえで大切なものばかり!
ディーセントワーク実現のための4つの戦略的目標とは?

ディーセントワークを実現するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
この答えの指標として、ILOが掲げる4つの戦略的目標があります。これは、2008年「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」の中で掲げられました。
簡潔にまとめると、
- 「雇用」をつくる
- 「社会保障」の充実した職場環境を提供する
- 職場での問題は「対話」で平和的に解決する
- 労働者の「権利」を守る
となります。
上記で強調した「雇用」「社会保障」「対話」「権利」という言葉は重要なキーワードです。
そしてディーセントワークを実現するための取り組みは、すべてこの4つの目標に関係しています。

日本で定められたディーセントワークの条件にも通じているね!
ディーセントワーク実現のための日本の取り組み

上記で説明した4つの戦略的目標を踏まえ、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、2つを紹介したいと思います。
働き方改革
「働き方改革」とは少子高齢化の影響で労働力が不足することを背景に、働き手を増やし労働生産性を向上させる目的とした政策です。
主な取り組みには、
- 長時間労働の解消
- 雇用形態やジェンダーを理由とした待遇格差をなくす
- 柔軟な働き方のできる環境づくり
- 職場でのダイバーシティを促進
- 最低賃金の金額上昇
などが挙げられます。
また仕事だけでなく、生活との調和を目指した「ワーク・ライフ・バランス」が目指されるように改革は進められています。
日本再生戦略
2012年、震災後の日本が今後も世界をリードしていくため、日本政府によって掲げられた方針です。そしてその中で、「ディーセントワーク」の実現も目標の1つとして組み込まれています。
この戦略はディーセントワークのみに注目したものではないですが、こうした政府の動きからも、日本において軽視できないものであることが分かります。

日本にも、いろんなアプローチがあるんだね。
ディーセントワークを実現し、誰もが働きがいのある仕事を!

「働きがいのある、人間らしい仕事」を意味するディーセントワーク。当たり前のようで、利益など別の目標を追求するあまり、忘れられがちな観点でもあります。
しかし近年、日本でも徐々に浸透が図られるようになってきました。
ちなみに10月7日はディーセントワーク世界行動デーとなっていますが、その日に限らず、多くの人が「働きがいのある、人間らしい仕事」を意識できるといいですよね。

なるほど!
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参考:国際労働機関 | ILO駐日事務所 , 厚生労働省