SDGsゴール11「住み続けられるまちづくりを」では、すべての人々が安全で豊かな生活を送ることができる都市づくりが掲げられています。
しかし、世界の都市では経済格差による貧困問題が深刻化しています。その1つが、世界に存在するスラム街の問題です。
今回はそのスラム街について、問題の原因や世界の現状、改善のための取り組みなど、いろいろな側面から紹介します。
Contents
スラム街とは?
スラム街とは、スラム世帯の人々が多く居住する地域のことを指します。
では、スラム世帯とはどのような世帯をさせのでしょうか?
UNICEFが2012年に発表した『世界子供白書 2012』では、スラム世帯を以下のように定義しています。
スラム世帯とは、都市部に居住する世帯のうち、以下の項目が一つでも欠如している世帯のこと
- 改善された水へのアクセス
過度な身体的努力や時間を必要とせず、適量の水が手ごろな価格で入手できる。
- 改善された衛生施設(トイレ)へのアクセス
私用トイレまたは妥当な人数で共用する公共のトイレの形態で、排泄物処理設備が利用できる。
- 住み続けられる保証
住居の確実な賃貸または所有の状態の証明として、または強制退去からの保護のために、使用できる証拠 または文書がある。
- 住居の耐久性
危険のない土地に永続的で適切な構造で施され、降雨、寒暖、または湿気といった気候条件が極度に至っても居住者を保護できる。
- 十分な生活空間
同じ部屋を共用するのは最高 3 名までである。
つまりスラム世帯とは、都市部に居住していながら経済的、環境的に劣悪な状態にある世帯を意味し、そうした世帯の集まった地域をスラム街といいます。
スラム街は、なぜ都市部に存在するのか?
基本的なインフラや社会的なサービスが整っているはずの都市部に、なぜスラム街が存在するのでしょうか?
人々の移住
都市に住む高所得~中所得層は、都市部のなかでもより良い生活環境やサービスが整う地域に移り住みます。
そうして空いた地域に、地方から雇用を求めてやってきた貧困層の人々が移り住み、居住地とします。
しかし、地域の所得が低下することで当初のサービスやインフラが廃れていき、人々が快適な生活を送ることが難しい地域となってしまうのです。
経済発展が引き起こす格差
都市部の経済発展に伴い、特定の職業に就く人々の収入が向上することで、職が無い人や低収入の人々との収入の格差は広がります。
また、電気や水道、交通機関など、中~高所得者のための生活サービスが充実しても、低所得者層のための生活サービスは向上されにくいのが現状です。
治安の悪化
スラムに住む低収入の人々は、麻薬売買や強盗などの犯罪に手を染めることも多くあります。
また、都市部の他の地域からも犯罪者が集まるようになり、スラム地域全体が犯罪の温床となります。
すると政府や警察の管理が行き届きにくくなり、生活環境はますます悪化してしまうのです。
世界のスラム街における現状
世界では、どのような地域にスラム街が存在するのでしょうか?
アジア
近年急激な経済発展を遂げているアジアの国々に、スラム街は数多く存在します。
例えば、映画『スラムドッグ$ミリオネア』の舞台となったインドは、都市部の経済格差が目立ちます。
1950年から2020年にかけて人口が約3.5倍に増加し、ここ20年でGDPが6倍近く成長した一方で、インドの大都市であるムンバイの近くにはアジア最大と言われるスラム地域が存在しているのです。
アフリカ
アジアと同じように急激な経済発展を遂げているアフリカの国々にも、スラム街が多く存在します。
東アフリカに位置するケニアは、「シリコン・サバンナ」と呼ばれるほど情報技術が発展しており、2018年の経済成長率は6.3%と急激な発展を見せています。
その一方で、ケニアの首都ナイロビの近辺には「アフリカ最大のスラム」と言われているキベラスラムが存在し、人々の生活環境や治安悪化が深刻な問題となっています。
あまり裕福ではなかった国が、IT分野の発展によって急成長することは素晴らしいことだと言えます。
しかし、経済の発展のスピードについていくことができず、劣悪な環境での生活を強いられる人々がいることを忘れてはいけません。
スラム街の問題を解決するための取り組みは?
スラム街の問題を解決するための取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか?
住居の建設支援
スラム街にある住居は、トタン張りや廃材を組み合わせたものが多く、火事や地震が起こった際、非常に危険です。
2019年にバングラデシュの首都ダッカのスラム街で起きた大火災では、2000棟以上の住居が消失するなど、住居の安全性の問題は深刻であることが分かります。
そうしたスラム街の住居建設を支援する取り組みとして、1976年にアメリカで設立された国際NGOハビタット・フォー・ヒューマニティの活動が有名です。
当団体はスラム街が存在する都市の政府と協力して安全性の高い居住地を共同建設し、人々が安心して暮らせる地域づくりに貢献しています。
人々の就労支援
スラム街の問題への解決策の1つとして、人々の雇用を生み出す取り組みも注目されています。
例えばスラム街に住む人々にアクセサリーや洋服、工芸品などの作り方を教え、彼ら自身が街に出て販売できるようにすることで、新たな雇用を生み出すことができます。
さらに、このような製品を海外に向けて販売する取り組みも増えています。
一時的な経済支援ではなく、お金を得る方法を教え、雇用を生むことで、貧困問題は根本的な解決に向かいます。
大切なのは、こうした安全な暮らしを続けるための取り組みを、スラム街に住む人々自身が続けられるように支援することでもあるのです。
スラム街にも目を向け、「住み続けられるまちづくりを」!
今回紹介したように、急激な経済発展を遂げた地域には、健康が脅かされるほど劣悪な生活環境で暮らす人々もいます。
経済発展といった喜ばしい話題のみならず、こうした「負の側面」にも目を向けることが重要です。
こうした問題を見直し、社会に生きるひとりひとりが健康に暮らせる世界を実現したいですね。
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